電界結合方式の原理・静電容量・周波数・特徴・製作実績を解説

ELECTRIC FIELD COUPLING WIRELESS POWER

電界結合方式ワイヤレス給電

電界結合方式は、 送電側と受電側にそれぞれ電極を設け、 電極同士が接近したときに形成される 静電容量を利用して電力を伝送する方式です。

電磁誘導方式がコイルと磁界を利用するのに対し、 電界結合方式では電極と電界を利用します。 そのため、電極形状の自由度や軽量化、 回転・多方向給電など、 電磁誘導方式とは異なる特徴を活かした構成が可能です。

電界結合方式の性能を理解する上で重要なのは、 「静電容量 C」「電極面積」「電極間距離」「誘電率」 「印加電圧」「使用周波数」です。

1 電界結合方式の基本原理

送電側と受電側の電極を近づけると、 電極間にはコンデンサと同じような静電容量が形成されます。 この容量結合を利用して、高周波電力を受電側へ伝送します。

1

送電側で高周波化

入力された電力を高周波へ変換し、 送電側電極へ印加します。

2

電極間で電界結合

送電電極と受電電極の間に 形成される電界を介して エネルギーを伝送します。

3

受電側で電力へ変換

受電した高周波電力を 整流・平滑し、 機器で使用できる直流へ変換します。

電界結合方式ワイヤレス給電のイメージ

電界結合方式ワイヤレス給電の基本イメージ

電界結合方式ワイヤレス給電の原理

送電側から受電側までの電力伝送フロー

2 電力伝送を左右する静電容量 C

電界結合方式は、 基本的にコンデンサと同じ原理を利用しています。 そのため、送電・受電電極間に形成される 静電容量が重要な設計パラメータになります。

CAPACITANCE

静電容量 C

静電容量は、 電極間にどの程度電荷を蓄えられるかを表します。

電極面積が大きく、 電極間距離が狭く、 電極間の誘電率が高いほど、 一般的に静電容量は大きくなります。

静電容量が大きいほど、 同じ電圧・周波数条件で より多くの電力を伝送しやすくなります。

VOLTAGE

印加電圧 V

電極間の静電容量が小さい場合、 必要な電力を伝送するためには 電極へ印加する電圧を高める方法があります。

電界結合方式では、 共振回路などを利用して 電極へ比較的高い電圧を印加する構成が用いられることがあります。

そのため、絶縁距離、部品耐圧、 電極構造、安全性を含めた設計が重要です。

3 静電容量を決める3つの要素

電極間の静電容量は、 主に「誘電率」「電極面積」「電極間距離」によって変化します。

DIELECTRIC CONSTANT

誘電率

電極間に存在する材料が 電界をどの程度形成しやすいかを示す指標です。 空気、樹脂、水、ガラスなど、 材料によって誘電率は異なります。

誘電率が高い材料が電極間に存在すると、 静電容量は大きくなる方向へ変化します。

一方で、 使用環境の変化によって誘電率が変わると 回路条件や共振条件も変化するため、 水分などが入り得る環境では注意が必要です。

ELECTRODE AREA

電極面積

送電電極と受電電極が対向する面積が大きいほど、 一般的に静電容量は大きくなります。

そのため、 大きな電力を伝送する場合には 電極面積を確保する方法が有効です。

一方で、 設備への搭載スペースや重量、 可動範囲などとのバランスが必要になります。

ELECTRODE GAP

電極間距離

送電電極と受電電極の距離が狭いほど、 一般的に静電容量は大きくなり、 電力を伝送しやすくなります。

反対に距離が広がると静電容量は小さくなり、 必要な電圧や周波数条件が厳しくなります。

そのため、 電界結合方式では 電極間ギャップをどこまで許容するかが 重要な設計条件になります。

4 比較的高い周波数が使われる理由

電界結合方式では、 数MHz帯など比較的高い周波数を利用した構成が多く見られます。 これは、電極間の容量性リアクタンスと周波数の関係が大きく影響します。

FREQUENCY

周波数が高いほど容量性インピーダンスは低下

電極間はコンデンサと同様の容量成分として働きます。 コンデンサは、 周波数が低いほど交流に対するインピーダンスが高く、 電流が流れにくい特性を持ちます。

反対に周波数を高くすると、 容量性リアクタンスは小さくなり、 電極間を介して電力を伝送しやすくなります。

そのため、 電界結合方式では6.78MHz帯や13.56MHz帯など、 比較的高い周波数を利用した研究・開発例が多くあります。

ただし、周波数を高くすると 半導体、配線、寄生成分、EMCなどの影響も大きくなるため、 単純に高周波化すればよいわけではありません。

電界結合方式では、 静電容量・印加電圧・周波数を組み合わせて 必要な電力伝送条件を作ることが重要です。

5 電界結合方式の特徴

電磁誘導方式とは異なる構造を持つため、 電界結合方式ならではのメリットがあります。 一方で、高電圧化や電極間距離など、 設計上の注意点もあります。

メリット

  • 電極をリニア形状・面状にしやすく、 水平方向の位置自由度を持たせやすい
  • 電極構造を比較的自由に設計できる
  • リング形状や多面電極など、 回転・多方向給電へ展開しやすい
  • 磁界を主に利用しないため、 磁性体の影響を受けにくい構成を検討できる
  • 電極部を薄型・軽量に構成しやすい

設計上の注意点

  • 必要電力によっては 比較的高い電圧が必要になる
  • 高周波回路が必要となり、 電源・回路設計が複雑になる場合がある
  • 電極間距離を大きくすると 静電容量が低下しやすい
  • 水分など、 誘電率を大きく変化させる物質の影響を受ける場合がある
  • 絶縁・沿面距離・EMCなどを含めた評価が重要

6 B&PLUSの電界結合方式 製作・研究実績

B&PLUSでは、 電界結合方式のプロトタイプ開発を継続して行っています。 電極形状を変更しやすい特徴を活かし、 標準基板、回転用途、多方向給電などのサンプルを製作しています。

STANDARD BOARD

電界結合標準基板セット

10W級の電界結合ワイヤレス給電を 試作・評価できる標準基板セットです。 送電基板、受電基板、 および電極部で構成されています。

電源回路を共通化し、 用途に合わせて電極形状やマッチング条件を変更することで、 さまざまな電界結合方式のサンプルを構築できます。

電界結合標準基板セット
電界結合標準基板 受電部

受電側の接続例

電界結合標準基板 送電部

送電側の接続例

ROTARY POWER

リング形状電極による回転給電

電極をリング形状へ変更することで、 回転用途へ対応した電界結合方式のサンプルです。

外径側・内径側に電極を配置し、 回転中でも送電側と受電側の対向状態を維持することで、 連続的なワイヤレス給電を行います。

デモ機では約5Wの給電を行い、 リング部を2分割構造にすることで シャフトなどへの取付性も高めています。

リング形状電極による電界結合ワイヤレス給電
リング電極分割構造

リング電極の分割構造

リング電極勘合部

分割部の接続構造

FREE POSITION

多面電極による360°フリーポジション給電

複数の電極を多面状に配置することで、 受電側の角度や向きに対する自由度を高めた 電界結合方式のサンプルです。

受電電極の向きが変化しても、 いずれかの送電電極と受電電極が対向する構造とすることで、 従来の一方向対向型では難しい 360°方向のワイヤレス給電を実現しています。

電極そのものを比較的自由な形状へ加工できる 電界結合方式の特徴を活かした事例です。

多面電極電界結合方式

多面電極構造

従来型と多面電極方式の比較

従来型と多面電極型の比較

7 電界結合方式が活かしやすい用途

電界結合方式は、 単純な対向給電だけでなく 電極形状を活かした特殊な構造に展開しやすい方式です。

回転部

リング形状電極を利用し、 回転中も非接触で電力を供給する用途へ。

リニア・移動部

長尺電極や面電極を利用し、 移動方向の位置自由度を持たせた給電へ。

フリーポジション

複数・多面電極を利用し、 受電側の向きや角度変化へ対応。

薄型構造

電極を板状・フィルム状に構成し、 厚みを抑えたい装置へ。

軽量化

コイルや磁性体を使わない構造を活かし、 受電部の軽量化を検討。

特殊形状

設備形状に合わせて 円筒・リング・多面などの専用電極を設計。

8 B&PLUSの電界結合方式ワイヤレス給電

B&PLUSでは、 電界結合方式を単なる研究テーマとしてではなく、 実際の用途へ応用するための試作・評価を進めています。

B&PLUS ELECTRIC FIELD WIRELESS POWER

電極形状の自由度を活かし、新しい給電構造へ。

平板電極だけでなく、 リング形状、長尺電極、多面電極など、 用途に合わせた電極形状を検討できます。 標準基板による基礎評価から、 専用電極・マッチング回路・機構を含めた 試作開発まで対応しています。

9 ほかのワイヤレス給電方式

ELECTROMAGNETIC INDUCTION

電磁誘導方式

コイルと磁界を利用し、 近距離で高効率・大電力の給電に 広く利用されている方式です。

MICROWAVE

マイクロ波方式

電磁波を利用して、 離れた場所へ電力を伝送する方式です。

電界結合方式のワイヤレス給電をご相談ください

必要電力、電極サイズ、伝送距離、 位置・角度自由度、回転・移動条件、使用環境などを伺い、 標準基板での評価から専用電極・試作開発までご提案します。

技術相談・お問い合わせ

電界結合方式のワイヤレス給電は、送電側と受電側にそれぞれ電極を設置し、この電極同士が接近した時に形成されるキャパシタを利用してエネルギーを伝送する技術のことです。



以下のフロー図ように、送電側の電極へ高周波の電気を流すと、電荷の移動が発生することで、電流が流れます。対向する受電電極へも高周波の電気が流れますので、受電側の回路で整流をして直流へ変換して使用するのが一般的です。


電界結合方式のワイヤレス給電における重要なパラメーター

電界結合方式ワイヤレス給電の基本原理はコンデンサ(キャパシタ)と同じです。その為、コンデンサの特性が電界結合の電力伝送能力と密接に関係しています。

以下の図はコンデンサの構造図です。コンデンサでは、【Q=CV】という公式が成り立ちます。
※Q:電荷(電気量)、C:静電容量、V:電圧

つまり、より大きな電気量を送る為には、静電容量Cを上げるか、電圧Vを上げる必要があります。



では、静電容量(C)や電圧(V)を上げる為にはどうすればよいのでしょうか?

静電容量(C)は、【C=εS/d】の公式により求める事が可能です。
※ε:誘電率、S:電極面積、d:電極間距離

つまり、
1:より誘電率の高い材料を使う
2:より電極面積を大きくする
3:より電極間距離を狭くする
ことで、静電容量(C)を高める事が可能です。

電圧(V)は、送電側の電源回路において共振回路を用いることで、電極へより高い電圧を印加することが一般的です。共振回路は、直列共振回路、並列共振回路など方式が複数あり、各社研究を進めています。

電界結合方式の場合、誘電率(ε)が低く、電極間距離(d)も大きくなりがちな為、一般的に静電容量(C)を高める事が難しいです。その為、電圧(V)を高くしないと電力伝送が成立せず、磁界方式と比較すると高電圧になるケースが多くなります。


電界結合方式のワイヤレス給電における電源駆動周波数

電界結合方式のワイヤレス給電では、6.78MHz帯や13.56MHz帯、それ以上など比較的高い周波数が用いられることが多くなっています。一方、磁界方式では80kHz程度の周波数帯も多く存在します。電界結合方式でも同様にKHz帯で構築することは難しいのでしょうか?

ここでも、コンデンサの特性が関連します。以下の図はコンデンサの周波数特性図となっており、横軸は周波数(f)、縦軸はインピーダンス(Z)です。
インピーダンスは交流に対する抵抗のようなもので、周波数fが低いほどインピーダンスが上がる為、電気が流れずらくなります。その為、80kHz程度の周波数では、インピーダンスが大きすぎて、電力伝送が難しく、比較的高い周波数が用いられることが多くなるのです。



※コンデンサには実際、インダクタンス成分(L)が含まれる為、青線のような特性となり、極小値(Ro)を自己共振周波数と呼びます。


電界結合方式ワイヤレス給電の特徴

磁界方式と比べて時、電界方式はどのような特徴があるのでしょうか?コイルや電極の形状、設計手法により条件が異なる為、一律の比較は難しいのですが、一般的には、電界結合方式のメリットやデメリットとしては以下が挙げられます。

【メリット】
・電極をリニア形状にすることで、水平方向での位置自由度を上げやすい
・磁界を使わない為、金属異物の影響を受けづらい(ただし、電極間を跨ぐと影響あり)
・アンテナ部の軽量化がしやすく、発熱しづらい

【デメリット】
・高周波化する必要があり電源部のコストアップに繋がる
・電極間距離を広げにくい
・誘電率が変わる水などの異物には弱い

特長を理解した上で、用途や環境に合わせて、最適な方式を選択する必要があります。


B&PLUSの電界結合ワイヤレス給電の製作実績

磁界を使ったワイヤレス給電製品は古くから電気製品などでも展開されており、小電力から大電力まで市場でのラインナップは豊富です。しかし、電界結合方式のワイヤレス給電は、企業や大学での研究レベルが主であり、一般的に市場展開している製品はほとんど見られません

しかし、B&PLUSでは、電界結合を使ったワイヤレス給電のプロトタイプ開発や研究を進めてきており、電界結合標準基板ユニットセットや過去の製作実績を御紹介致します。


【電界結合標準基板を使った標準基板セット】



10W級の電界結合ワイヤレス給電が構築できる標準基板セットです。電界結合標準基板セットは、送電基板と受電基板、および2種類の電極で構築されます。マッチング回路を含んだ電極部は用途に合わせて変更することが可能です。
また、電源部は共通化して、今回の電極以外にも専用電極を開発することで、効率的に色々なバリエーションのサンプル構築が可能になります。
電計結合標準基板セット.png

  

電界結合標準基板セットに関する、詳細はこちらからご覧頂けます。


【回転用途向けにリング形状電極ユニット】



電極形状をリング状へ変更することで、回転用途などに最適化したモデルです。電極を外径側と内径側に配置することで、回転中も常時給電(約5W)が可能になります。
  
電極は2分割できるようになっており、接合部はマグネットと端子で接続されます。2分割構造により、シャフトなどの回転部へ取付性が大幅に向上します。

  
 
今回のデモ機では、内径φ50㎜、外形φ100㎜で構築しています。コイルでリング構造を構築する場合、コア材が専用になる事が多い為、寸法変更がしにくいのですが、電界結合では電極で構築が出来る為、寸法変更が比較的容易となります。

リング電極形状電界結合ユニットに関する、詳細はこちらからご覧い頂けます。


【複数電極を使ったフリーポジション形状機】



多面電極構造を用いる事で、従来の方式では難しかった受電電極の角度を問わない給電を可能にしました。以下の写真のように電極を多面状で構築することで、いずれかの送電電極部と受電電極部が対向し、360°どの方向でもワイヤレス給電が成立します。

 

多面電極形状電界結合ユニットに関する、詳細はこちらからご覧頂けます。

      
電界結合技術を使ったサンプル製作を御希望のお客様は、お気軽にお問合せ下さい。
ワイヤレス給電技術に関する各種お問い合わせ (b-plus-kk.jp)

 

 

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