ワイヤレス給電(無線給電とも言われます)には磁界を用いた技術と電界を用いた技術があり、さらにこれらを近傍領域で行う非放射型と遠方領域で行う放射型で分けられます。
非放射型(NON-BEAM WPT)・・・電磁誘導方式、磁界共鳴方式、電界結合方式など
放射型(BEAM WPT)・・・電波方式、レーザー方式など
それぞれ、電磁誘導方式、磁界共鳴方式は磁界エネルギーを介在、電界結合方式は電界エネルギーを介在、マイクロ波方式やレーザー方式は電磁波エネルギーを介在させた方法です。
磁界は電流が流れるものの周りに発生し、身近なものとしては電磁石などです。電界は、電圧のあるところに発生し、いわゆる静電気などでパチッとするエネルギーはイメージしやすいかも知れません。磁界の強さが変化すると電界が発生し、電界の強さが変化しても磁界は発生します。電磁波はこれらの関係性で、電界と磁界が互いに影響し合いながら、 空間を伝わっていく波です。磁界も電界も発生源から離れると、急激に小さくなる性質があります。(ダイポールアンテナ/近傍界において磁界は距離の2乗、電界は距離の3乗)。
一般的には、以下表のような特徴があります。
電磁誘導方式(高周波型電磁結合方式、磁界共鳴方式) |
現在、ワイヤレス給電で最も主流なのが、磁界を用いた方式です。この方式では、電磁誘導の原理が技術ベースとなっています。
この方式のワイヤレス給電は2つのコイルを使うことで実現しています。
まず、コイル(1)に電気を流すと磁界が発生します(右ねじの法則)。その磁界をコイル(2)が受けると誘導電流が流れます。これがワイヤレス給電の基本原理です。コイルと誘導電流による技術はさまざまな場所で使われており、電圧を変換するトランス、誘導電流を熱に変える誘導加熱(IHクッキングヒータなど)なども同じ原理です。
【電磁誘導方式のワイヤレス給電モジュールの例】
高周波型電磁結合方式と磁界共鳴方式の違いは、送受電コイルにコンデンサを加え、LC共振と言う現象を使っているかどうかになります。
磁界共鳴方式では、送電側コイルを含む共振回路と、それと同じ共振周波数を持つ受電側コイルを含む共振回路で構成され、送電側コイルに電流を流すと発生する磁界の振動が、同じ周波数で共鳴する受電側共振回路に伝わり、電流が流れるという原理を利用しています。ある程度距離や位置ズレがあっても電力伝送ができるため、送電側と受信側の間の隙間が大きくても給電できるのが特徴です。
厳密に言うと、qi規格やB&PLUSで使っている技術もLC共振回路を利用していますが、共振現象は補助的に利用しており、Q値(コイルの性能)や周波数の制御方法なども異なります。
電界結合方式 |
電界結合方式は、コンデンサと同じ原理です。絶縁層(空気)を挟んだ送電側と受電側の電極に高周波を流し、近づいた際に電界を介して電力伝送をします。
電極部が金属平板で良い為、形状的な製作自由度が高く、水平面での軸ズレに強い特徴があります。また、電極部へ流れる電流を小さくする事が出来るので発熱しづらいメリットがあります。ただし、伝送距離が取りにくい、高い電圧を使用する必要がある、大きい電力を送る場合は電極が大きくなりがちという課題もあります。
【電界結合方式を使ったワイヤレス給電のデモ機の例】
マイクロ波方式(電波受電方式) |
電波受信方式は、電流を電磁波に変換して電力伝送を行います。これを受電側の整流回路で直流電流に変換します。2.4GHzや5.8GHzなど非常に高い周波数を用いるのが一般的です。非常に長距離の電力伝送が出来る為、宇宙太陽光発電という静止衛星で発電したエネルギーをマイクロ波伝送して、海上に設置した受電アンテナ設備へ送るという壮大な構想などもあります。その他、2.4GhzのWifi電波を受電して電力エネルギーとして活用するなどの構想もありますが、まだ研究用途が中心の状況です。送受電の間に人が入る可能性がある事による安全性の問題、伝送効率やアンテナサイズなどの課題がありますが、諮問第2043号「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」への一部答申が出ており、2021年現在、法整備がすすんでいるところです。